こんにちは。サイエンスコミュニケーターの高知尾です。
今回は、カミオカラボの中高生ラボサポーターを対象にした1泊2日の研修旅行について報告します。(準備ブログはこちら)
どこへ行ったの?
今年の研修先は東京お台場にある日本科学未来館です。ホームページの紹介によると日本科学未来館は「いま世界に起きていることを科学の視点から理解し、私たちがこれからどんな未来をつくっていくかをともに考え、語り合う場」とあります。展示としては宇宙から医療、人工知能に至るまでさまざまなテーマで構成されています。そしてそれらの展示を活用して来館者とお話したり展示やイベントを企画する「科学コミュニケーター」と呼ばれる方々が在籍しています。
目的は?
ラボサポーターは、カミオカラボに来館される方々に宇宙・素粒子研究の解説をしています。その際に大事なのは正しく伝えることです。そのためには、自分が知っていることと曖昧なこと、まだ知らないことを自ら整理して組み立て直して表現する必要があります。
ラボサポーターである今回の参加者たちは自分の担当展示を決めて予習をしていきました。当日は実際に展示を確認した後、同行した他の参加者に対して展示の内容やその周辺の事柄について正しく伝えることに挑戦します。
未来館科学コミュニケーターの方による講義
展示解説にチャレンジする前日には、未来館の科学コミュニケーターの方による「科学コミュニケーション」に関する講義がありました。さらに、参加者自らもカミオカラボでの解説の際に普段気をつけていること等を書き出してみんなで共有していきました。
未来館科学コミュニケーターの方の司会のもと、付箋を使ってアイディア共有
未来館が解説する際に大切にしていることのひとつに「対話」というキーワードがありました。解説と言うと来館者に対して一方的に情報を提供するイメージがありますが、「対話」の特徴は話し手と聞き手の立場が決まっていない(お互いに入れ替わる)ことや、お互いに新しい考え方や見方が得られることなどを教わりました。
特に、環境問題や自然災害、新技術などなど、まだ決まっていない未来のことを扱う場合は一方向ではない「対話」が大事になります。
いざ、解説してみよう!
さて、展示解説は2日目の午前中いっぱいで行われました。
参加者はそれぞれ大いに予習をしてきていたので、解説内容の中には私自身知らなかったことも多くありました。
例えば、下の写真は「100億人でサバイバル」という自然災害をテーマにした展示です。ある参加者は防災に必要な考え方のひとつに、「自助」「共助」「公助」があると解説しました。自助は自分の命を守る、共助は家族や地域コミュニティの単位で助け合う、そして公助は国や地方公共団体によるサポートです。
そして、それぞれの重要性の割合が7:2:1という考え方を提示しました。阪神淡路大震災の際のデータを基にした考え方ですが、まずは「自助」が大切ということですね。
この考え方を提示することで次の段階では、自助、もしくは共助の取り組みとして私たちはどんなことができるのかという聞き手が主体にもなれる話題に移っていけますね。単純な「解説」から話し手と聞き手と対等な「対話」に移行できる可能性があると言えるのではないでしょうか。
展示「100億人でサバイバル」を前に解説する参加者
解説体験の実施後、参加者からは「展示には書かれていない情報を伝えられた瞬間が嬉しかった」「聞き手に問いを投げかけてみたが、想定していた回答と違って戸惑った」などの感想が挙がりました。
正しい情報を伝えるために調べてきたさまざまな情報と向き合った経験はきっと普段のラボサポーター活動やそれ以外でも役立ってくれる(といいな…)と思います。
それでは!