都竹 淳也 2016年3月10日
3月8日の第1回飛騨市議会定例会で行った所信表明の全文です。
今議会に提出しております案件の総括説明に先立ちまして、私の市政運営に関する所信を申し述べ、議員各位並びに市民の皆様のご理解とご協力をお願い申し上げたいと存じます。
さて、飛騨市は合併後12年を過ぎ、干支で言えば一巡し、新たな時代へと入ったと考えておりますが、取り巻く環境は大きく変化しております。最大の課題とも言える人口減少はさらに加速しており、先に発表されました平成27年国勢調査の人口速報集計結果によりますと、飛騨市の人口は24,708人で、5年前に比べて2,024人、合併前の平成12年国政調査時の30,421人に比べると、5,700人余の減少となりました。 これに伴って、現役世代人口、事業所数なども減少しており、消費の縮小、空き家の増加なども進むとともに、高齢者の増加に伴って需要が高まる介護サービスの担い手不足や、市内企業の人手不足も顕著になっております。 一方で、飛騨市においては、昨年秋の梶田隆章東京大学宇宙線研究所所長が、スーパーカミオカンデの研究成果によって、ノーベル物理学賞を受賞されたことにより、「カミオカ」の名前が一躍世界に広がったことに加え、今年秋には、古川祭が、全国33の山車・鉾・屋台行事の一つとして、ユネスコ無形文化遺産登録について審議される予定であり、大きな発展のチャンスを迎えております。
また、外に目を向けますと、我が国経済、世界経済が比較的堅調に推移するなかで、全国的に製造業の業績や外国人旅行者数なども伸びており、飛騨市の活力につながるチャンスも到来しております。
さらに、私自身、選挙に先立って、市内全域をまわり、様々な現場を見させていただく中で、質の高いまちづくり活動がたくさん行われており、発展の芽が数多くあることを実感してまいりました。
こうした中で、私に課せられているのは、飛騨市が持つ地域資源を活かし、成長の芽を大きく伸ばしながら、人口減少という課題に立ち向かい、市民の皆様とともに、飛騨市を未来に向かって発展させていくことであると考えております。
そのために、私は、「前向きに動き続ける市政」をつくっていきたいと考えております。よいと思ったことはまずやってみる、市民の皆様のご要望やご提案に対しては、まずは実現する方法を考えてみる、そしてよりよい結果を求めて、柔軟に改良を重ねながら、工夫とチャレンジを積み重ねていく。そんな市政にしたいと思います。 そして、次の3つを私の市政運営の基本姿勢としてまいります。
まず、一点目は「融和と対話」です。飛騨市の各地域間の市民レベルの交流を深め、よいところを学び合うような取り組みを通し、飛騨市全体の融和を目指します。また、市民の皆さんとの対話を徹底し、市民の皆さんの声と思いに沿った政策を進めます。
私自身、長く県職員として行政の仕事をしてまいりましたが、その中で、常に現場へおもむき、自分の目で見て、耳で聞いて、話をして、自分の頭で考えるという「現場主義と対話重視」の姿勢を自分自身のスタイルとしてまいりました。飛騨市においても、この姿勢を貫くとともに、市役所全体の姿勢としていきたいと考えております。 二点目は「交流と連携」です。飛騨市内はもちろん、飛騨全域や県内、北陸、全国のすぐれた人材や企業、団体、大学等との交流を深め、互いの強みを生かした「共創」による連携型の政策を進めます。
さらに、飛騨市を多様な交流の舞台とし、市民と市民、市民と旅行者、旅行者同士など、人と人とが出会い、ふれあう場とする取り組みを通じ、賑わいと新しい価値を創造します。
三点目は、「挑戦と前進」です。先ほども申し上げましたとおり、いいと思うことはやってみる、どんな困難な課題でも乗り越える方法を考える、という前向きな市政を進めます。こうしたチャレンジを積み重ねることで、飛騨市発の政策を生みだし、人口減少時代のモデルをつくってまいりたいと考えております。
続いて、重点的に取り組む政策についてご説明申し上げます。私は、自らの目指す飛騨市の将来像を「元気で、あんきな、誇りの持てるふるさと飛騨市」としております。これは、「元気」、つまり、経済的な活力に満ちた飛騨市づくり、「あんき」、すなわち、高齢者も障がい者も、弱い立場の方々も安心して暮らせる飛騨市づくり、そして、ふるさとの素晴らしさを自慢し、ここに生まれて、住んでよかったと思える「誇りある飛騨市」をつくりたいという3つの思いを表現したものです。
この三つの政策軸に人づくりの観点を加え、四つの柱で政策を進めてまいります。
まず、第一は、「強みを活かした元気な飛騨市づくり」であります。
人口減少局面においては、ひとたび人口が減り始めますと、出生数が増加に転じ、それが継続したとしても、人口減少が止まるまでには60年から100年程度を要してしまうという「人口慣性」という現象が起きます。
こうした中にあっては、出生数を増やし、あるいは人口流入を増加させるといった「人口減少そのものを止めていく対策」に加え、目の前にある人口減少を正面から受け止めながら、「人口が減る中で活力を維持していく対策」を、複眼的に進めていく必要があります。
特に、人口減少下では、市内の消費が減少し、経済が縮小していく恐れがあることから、これを補うために、外から所得を稼ぎ、消費を拡大するとともに、市内で循環させていくことが必要です。
こうした考えから、観光誘客の拡大を通じた観光消費額の拡大に取り組みます。特に飛騨市内での滞在時間を伸ばすことを目的にした見どころ、体験プログラムの創出、宿泊を増やすための対策、また、消費額の大きい外国人誘客の拡大に取り組んでまいります。また、交流の拡大につながるインフラを整備するという観点から、道路整備についての国や県などへの積極的な要望も行ってまいります。
また、地域外所得獲得のためには、製造業や農林業の振興を通じた製品、生産物を外へ販売していくことも大変重要です。魅力ある商品の開発はもとより、生産現場や農家を支える担い手の確保、販路の拡大の支援、農産物のブランド化に取り組みます。商業についてもネットショップ等の活用による地域外への販路拡大支援を積極的に行います。
地元小規模企業、商店の支援については、それぞれの持つ強みを見つけ、それを磨き、販路を拡大していくような支援を行う専門家を確保し、寄り添い型の支援を行えるような取り組みを進めたいと考えております。
さらに、飛騨市自体も地方交付税や補助金など、国や県からの歳入を通じ、地域外所得を獲得している大きな機関であるという認識に立ち、地元への優先発注、優先購入、消費喚起策等を通じて、市内への経済循環を高めていきたいと考えております。
第二は、「いつまでもあんきに暮らせる飛騨市づくり」であります。不安のない暮らしづくりは市政の最も重要な課題です。介護が必要な高齢者、障がいのある方々、生活困窮の方々など弱い立場の方々が、飛騨市にも多くおられます。そして、私たち誰しもが社会的に弱い立場になる可能性があることを考えますと、その支援は市政として最優先すべきと考えております。お一人おひとりの実際の暮らしに丁寧に目を配り、きめ細かな支援を行うことを重視してまいります。
このうち、高齢者介護の面では、介護人材の確保を最優先の課題と位置づけ、働きやすい体制づくりに重点的に取り組みます。また、健康寿命を延ばしていくことも重要であり、介護予防を念頭に置いた健康づくりの支援を強化してまいります。
障がい者の支援においては、特に成人期以降の居場所づくり、就業の支援を重視するとともに、発達障がい児の早期療育体制づくりや、支援制度の柔軟な運用にも努めてまいります。
医療体制の確保という点では、飛騨市民病院の医師確保、診療所の維持、地域全体の連携の中での医療体制づくりの支援を進めます。
さらに、生活困窮者対策も強化したいと考えており、特に住まいの確保や生活に必要な物資等の支援のあり方を検討してまいります。
こうした弱い立場の方々の支援と同時に、地域全体が安心できるための防災対策を進めるため、自主防災組織の支援、交通安全対策や災害防止対策にもしっかり目を配って参ります。
第三は、「誇りの持てる飛騨市づくり」であります。市民の皆様がふるさと飛騨市に自信と誇りを持っていただくことは、若者の飛騨市に住み続けたいという気持ちを育て、旅行者を呼び込み、まちづくりを進める基礎となるだけでなく、飛騨市全体の融和、一体化にも資するものであると考えております。
このため、まず、飛騨市の宝探しを徹底的に進めてまいります。歴史、文化などはもとより、産業遺産、景観、食、モノなども加え、市民の皆様、旅行者の方々、市外の方々にもご協力いただきながら、飛騨市のすばらしさを掘り起こし、飛騨市の宝として認定していくような取り組みを進めてまいります。
また、各地域の祭りや伝統行事、伝統工芸などについては、将来への継承のため、後継者育成や行事維持のための支援を進めてまいります。また、飛騨市内の各地域間で相互に参加し、お互いのよさを知り合えるような支援も行いたいと考えております。
さらに、ふるさと飛騨市の歴史や文化、社会を子どもたち、そして、市民の皆様全体に学んでいただけるような「ふるさと教育」にも力を入れてまいります。この中においては、子どもたちがまちづくり活動に参加していただくことによって、まちづくりそのものを学んでいくような取り組みも検討していきたいと考えております。
なお、小柴昌俊先生、梶田隆章先生というお二人のノーベル賞を輩出したスーパーカミオカンデ、ユネスコ無形文化遺産登録が確実視されている古川祭、そして、ぎふの宝ものに認定された天生湿原、池ヶ原湿原などにつきましては、飛騨市の誇りとして重点的な振興策を講じてまいります。
第四は、「未来を支える人材に満ちた飛騨市づくり」であります。飛騨市を支えていくのは子どもから高齢者まで、全ての市民の皆様であるという認識のもと、お一人おひとりがのびのびと活躍し、やる気と生きがいを持てるような政策を進めます。
乳幼児期の人づくりとしては、子育てしやすい地域づくりを目指し、保育を中心に、家族をサポートする体制づくりに取り組みます。
学童期においては、子どもたちの強みを伸ばし、自己重要感や自信を育む教育を重視していきたいと考えております。また、先ほどのふるさと教育とも関連しますが、人とつながり、地域をつくる力、いわば「社会力」を育てられるような取り組みを検討してまいります。
そして、若者の定着、確保、移住・定住の促進という点では、地元企業へのUIターン就職促進の取り組みと連動し、住宅対策や空き家を借りやすくする対策なども含める形で飛騨市に住んでいただくことを目標にした施策を進めてまいります。
さらに、市民の皆様方に質のよいまちづくり活動を自由かつ活発に進めていただけるような支援を行うとともに、飛騨市全体でこうした活動を盛り上げる取組みを進めることにより、まちを支える人づくりにつなげていきたいと考えております。
加えて、女性の方々の自由な活動の応援、高齢者の方々の地域での交流活動や生きがいづくり、体力づくりなどの取組みも積極的に支援したいと考えております。
以上が、私が今後取り組みたい政策の基本的な考え方でございます。この具体的な施策については、6月補正予算に向けて検討を進め、肉付け事業としてご提案させていただきたいと考えております。
その立案にあたっては、市民の皆様に私の考えをお話しし、市民の皆様の声をお聞きしたいと考えており、市内全域において市民の皆様と市長の意見交換会をできる限り多く開催させていただきたいと考えており、今月中にも始めさせていただく予定です。
最後に行財政運営の方針について申し上げます。飛騨市の財政は、前井上市長が進めてこられた財政再建の取り組みの中で、地方債残高の増嵩が抑制され、また、財政調整基金も県下の自治体の中でも高いレベルで確保がされており、健全化の道筋がつきつつあるものと考えております。
一方で、歳入の4割以上を占める地方交付税が合併10年後から始まった算定替えにより縮減されつつあり、その見直し方針の影響も不透明であること、市税の5割以上を占める固定資産税が地価の下落によって減少を続けているほか、現役世代人口の減少により、個人市民税も減少傾向にあることなどにより、今後の財政見通しは予断を許さない状況にあります。
こうした状況を踏まえ、長期的展望に立って、持続可能な財政を構築していくことが必要であると考えております。特に、市債の発行については、前向きな投資を行う一方で、交付税措置等がある有利な起債を選択することにより、常に将来のことを考えたバランスのよい財政運営をしていきたいと考えております。
行財政改革については、施設の見直しなども積極的に進めてまいります。加えて、地元雇用に直結している施設も数多いことから、その影響も慎重に考慮しつつ、むしろ指定管理をお願いしている施設については、売り上げや稼働率の増加につながる取り組みを積極的に行うことによって歳出の抑制を図っていきたいと考えております。
また、歳入確保という面では、ふるさと納税を、市が自ら営業努力によって地域外から所得を獲得できる重要なツールと位置づけ、来年度より始まる企業版ふるさと納税の活用を含め、積極的に取り組んでまいりたいと思います。
並行して、国や県の交付金や補助事業の活用については、募集要項が発表になる前から担当者等に具体的な提案を行いつつ、情報収集していくことが肝要であることから、普段からの政策提言やネットワークづくりに力を入れてまいります。
加えて、既定の事務費や職員の旅費等の中で、あるいは市の持つ情報発信力を活かしながら、市内企業や市民の皆様を支援するような「ゼロ予算施策」を積極的に進めてまいります。
以上が、私の市政運営に対する基本的な方針でございます。市政全般にわたり、全身全霊で取り組んでまいる所存でございますので、議員各位をはじめ、市民の皆様の温かいご支援とご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。