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第5回目の研究者トークを開催しました

印刷用ページを表示する掲載日:2019年10月18日更新

ニュートリノ!サイエンスコミュニケーターの高知尾です。

 

10月13日に行われた研究者トークのテーマとなった実験は、「XMASS実験」と「SK-Gd実験」でした(2つも聞けるのは贅沢ですね!)。ちなみに、こちらはどうやって読むかと言いますと、それぞれ「エックスマス」「エスケージーディー」と読むそうです。

ご登壇いただいたのは、東京大学宇宙線研究所の市村晃一特任助教です。

お引き受けいただき、ありがとうございました!

 

超新星爆発イラスト前での一枚

超新星爆発イラスト前の市村さん

 

XMASS実験は宇宙の大半を占めていると考えられている未知の物質「暗黒物質」の発見SK-Gd実験は宇宙138億年の歴史の中で過去に起きてきた超新星爆発の名残の初観測が目的で、成功すればどちらもかつて誰も成し遂げたことのない成果となります。

 

そしてどちらの実験でも、観測のために必要となるのが今回のトークタイトルにある「きれいな検出器」なのです。

 

例えば、暗黒物質は宇宙から地球にたくさん降り注いでいると考えられているのですが、何でもするすると通り抜けてしまうという性質があります。そのため、検出器の中で反応して観測されることは非常に稀です。一方で検出器に使われている材料には一般に、微量ですが放射能が含まれています(もちろん、放射能は私たちの体にもバナナにもすべてのものに微量に含まれています)。微量ではあるのですがこの放射能によって出てくる電子や光といった放射線が検出器の中で反応して観測されます。すると、放射線による信号と暗黒物質による信号とが区別できなくなってしまいます。これを市村さんは、「砂山から砂金を探すような」苦労だと表現します。しかも、だれも見たことがない「砂金」を探し当てるというのは非常に困難なことだろうと想像できます。

 

そこで研究者たちは検出器を作る前の段階から、使う材料に含まれる放射能をひとつひとつゲルマニウム検出器という放射線測定器で測定します。そして、できる限り放射能の少ない材料を選定することによって「世界一きれいな検出器」を開発します。

 

SK-Gd実験の場合も、「きれいな検出器」が重要です。SK-Gd実験では現在のスーパーカミオカンデを改良して、過去の超新星爆発によって生じて今はそこら中を飛び回っているはずのニュートリノを捉えようとします。これらのニュートリノは、スーパーカミオカンデ内の水とぶつかって微弱な光を出します。ところが、検出器を構成している材料に錆(さび)が付着すると、この光に影響を与えて観測を困難にしてしまいます。

 

ニュートリノや暗黒物質の研究というと、得られたデータを解析してという所に目が行きがちですが、実は検出器の製作段階で勝負が決まってしまうこともあるため、研究者の方は常に慎重に慎重を重ねて進めているということを改めて感じました。今回ご参加いただいたみなさまにも研究者の地道な努力が伝わったと思います。

 

10月の研究者トークの様子

放射線による雑音信号(砂山)と暗黒物質信号(砂金)の違いを説明する市村さん

 

さて、次回の研究者トークは11月頃に「重力波望遠鏡KAGRA」についてお話しいただく予定です。登壇者など詳細は近日中に「イベント」のページでお知らせ予定です。過去のブログでも少し触れましたが、今月初めに完成式典が富山で開催され、いよいよ本格稼働が目前に迫るKAGRA。

どんな話が聞けるのか、今から楽しみです。

 

 


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