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中畑雅行教授のインタビュー

印刷用ページを表示する掲載日:2019年3月18日更新

東京大学宇宙線研究所副所長でいらっしゃり、神岡宇宙素粒子研究施設の施設長でもいらっしゃる中畑雅行教授にお話を伺いたいと思います。

「ひだ宇宙科学館カミオカラボ」は、先生が実験代表者をつとめていらっしゃるスーパーカミオカンデを中心として宇宙物理学をわかりやすく紹介する施設として(来年・今年)の3月27日にオープンします。

問:先生にとってカミオカラボはどのような施設でしょうか?

中畑雅行教授の画像

我々が日々研究をおこなっているスーパーカミオカンデが展示の中心になっています。
2017年1月に当研究所と飛騨市で連携協力協定を締結しているんですが、この「ひだ宇宙科学館カミオカラボ」についても、その協定にもとづいて検討段階から私たち研究者もいっしょになって取り組んできていて、専門業者の方々、一般の方々とともに、展示内容や展示方法の検討を行ってきました。わかりやすく研究内容をお伝えできる施設になっていると思います。
国民の多くの方々が梶田先生のノーベル物理学賞受賞によってスーパーカミオカンデという装置のなまえ、ニュートリノという物質の名前は耳にしたことがあると思いますが、その仕組みや内容について、少しでもご理解いただけるのではないかと考えています。

問:ひだ宇宙科学館カミオカラボで特に紹介するとすればどのような展示になりますか?

スペースシップの画像

展示ホール中央に配置される大きなスクリーン展示ですね。
研究者が毎日通っている坑道、実験エリアなどの映像が実写で見られるようになる予定です。
なかなかの迫力だと思いますよ。
タイミングよく、2018年にはスーパーカミオカンデのアックグレードのために12年ぶりにタンクをあけ作業を行いました。
その時に撮影した実際の映像も使われています。
スーパーカミオカンデの最も重要な目である約11,000個の光電子増倍管の様子を見ていただくことができるようになっています。

また、我々が実際にスーパーカミオカンデの一部を正確に再現した光電子増倍管の展示もあります。
それから、スーパーカミオカンデというのは、地元企業である神岡鉱業さんの掘削技術や浜松ホトニクスさんの高感度な光電子増倍管を製造する技術、三井E&Sさんによるステンレス製のタンクを建造する技術、オルガノさんによる超純水を製造する技術など、本当に高い技術力によって作られているんですが、その一端も紹介されていますので、世界最先端の研究を支える技術力という視点から展示を見てもらってもいいかもしれませんね。

問:カミオカラボでこだわった点などがありましたら教えて下さい。

展示の正確さにこだわりました。
カミオカラボにはスーパーカミオカンデの一部を再現した光電子増倍管の展示がありますが、そこに使われている光電子増倍管自身はもとより、それを固定しているサポート金具などは、ねじ一本一本、ナット一つ一つに至るまで、本物と同じものが使われています。
残念ながら、スーパーカミオカンデは観測中は蓋が閉じられ、中の様子を見ることが出来ません。しかし、カミオカラボに来ていただければ、タンクの中にいるような雰囲気を感じていただけると思います。

問:どのような方々に来ていただきたいですか?

そうですね。
お子さんから年配の方々まで多くの方に来ていただきたいと思います。
特に、多くの小学生、中学生、高校生の方々には来ていただき、科学の研究の面白さを知っていただき、将来そうした方面に進んでもらえると嬉しいです。
宇宙の神秘に興味を持たれている一般の方々にも楽しんでいただける施設だと思います。

問:先生にとって、スーパカミオンデは?

自分の体の一部のような気がしています。ニュートリノを使って宇宙全体をいつも眺めている目としてですね。
もちろん、スーパーカミオカンデの方がけた違いに大きいわけですが(笑)。

問:将来にわたってカミオカラボに期待する役割などがあれば教えて下さい。

現在、スーパーカミオカンデは次のステージへと進む準備をしています。
それはスーパーカミオカンデ-ガドリニウム実験(SK-Gd)といって、希土類の一種であるガドリニウムを超純水に加えることにより、装置の感度をあげることができるようになります。
それによって、星々が作られてきた歴史を解明したり、われわれ自身を構成する物質の起源をも探ることができるようになります。
このように、宇宙物理学は日々進化しているわけですが、このカミオカラボでも、そういった最新の研究を多くの方々に伝えていただけるとよいと思います。

その次には2020年代後半に観測開始を目指しているハイパーカミオカンデがあります。
それはスーパーカミオカンデの約10倍の大きさを持つ、より高性能な実験装置ですが、新たな研究領域に踏み込むことができると考えています。
カミオカラボでもハイパーカミオカンデについて紹介していただく日がくることを期待しています。

今回の展示スペースには、アウトリーチ活動の一環として、研究者と一般の方々が触れ合えるスペースも設置されます。実際の研究の様子などを伝えていければと考えています。

最後に飛騨市民へのメッセージをお願いいたします。

中畑雅行教授がインタビューをうけている画像

我々は、長年にわたって神岡の地で研究を続けてくることができたのも、地元の方々のご理解、ご協力があってのことだと思っています。
この場をお借りして、あらためて感謝の意を表したいと思います。カミオカラボを通して、我々の研究のことを、もっと知っていただければと思っていますし、知ることの喜びを市民のみなさんと共有したいと思っています。

Coverage date
December 27, 2018


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